世界の漁場に迫る危機:亜寒帯化による生態系への影響
亜寒帯化とは?
亜寒帯化とは、温暖化や海洋熱波などの影響で、これまで極寒だった地域が徐々に亜寒帯気候へと変化していく現象を指します。北極海に隣接するベーリング海では、亜寒帯化が急速に進行しており、その結果、海洋生態系に深刻な影響を及ぼしています。
ベーリング海でのカニの大量死:亜寒帯化の影響
2021年、ベーリング海で約100億匹のズワイガニが死滅するという異常事態が発生しました。この原因は、海洋熱波と温暖化によるベーリング海の亜寒帯化にあります。米海洋大気局(NOAA)は、生態系の急激な変化がカニの大量死の主要因であると結論付けました。これにより、世界有数の漁場であったベーリング海は、急速にその姿を変えつつあります。
海洋熱波によるズワイガニの餓死
ズワイガニの死滅の主な原因は、2018年と2019年に襲った海洋熱波です。この熱波によりズワイガニの代謝が急上昇し、それに伴うカロリー消費を補う十分なエサがなく、結果的に餓死しました。また、海水温の上昇により、マダラが北上してきて、生き残ったズワイガニを捕食するという二重の打撃を受けたのです。
亜寒帯化の加速と先住民の知恵
ベーリング海はかつて、海氷に覆われた「極圏海域」とされていましたが、温暖化の影響で徐々に亜寒帯海域に変わりつつあります。NOAAは、この亜寒帯化の傾向が今後さらに加速すると予想しています。
ウナラスカの先住民族行政機関トップ、クリス・プライス氏は「猛烈な嵐や異常気象が増え、この地域の海洋生物の姿が見られなくなった」と指摘しています。また、漁業者組合のリンダ・ベンケン代表も、温暖な海域に生息する魚類がアラスカ湾やベーリング海で見られるようになったと語っています。こうした変化は、急速に進行する亜寒帯化の一例といえるでしょう。
未来への課題と持続可能な漁業
アラスカ州政府は、漁獲量の制限や生態系保護に向けた対策を進めていますが、亜寒帯化が進行する中で、将来予測は困難を増しています。生態系の管理には限界があり、これまでのような大量漁獲の継続は難しい状況です。
先住民たちは長年、必要以上の魚や動物を捕らず、生態系を守りながら生活をしてきました。彼らの知恵を学び、持続可能な漁業を目指すことが、今後の課題となるでしょう。
結論
亜寒帯化によるベーリング海の変化は、世界有数の漁場に深刻な影響を与えています。ズワイガニの大量死や生態系の崩壊は、地球規模での環境変化の象徴といえます。今後は、持続可能な漁業を目指し、環境保護と経済活動のバランスを取ることが求められるでしょう。